に言ふ。或は又それを日本で信ずる者もあります。さうでない、日本は歐洲と交通以前既に立派な文明を持つて居つた。今申上げた大化改新と云ふと西歴六百五十年であります。其頃はまだ農業をするのに鐵が少いから鐵で拵へた鍬と木で拵へた鍬と二つ使つて居つた。然るにそれが七八十年の後には木の鍬と云ふものは全く無くなつて、鐵の鍬ばかり使ふやうになつた。西歴の七百年、大寶元年文武天皇が右大臣|阿部の御主人《アベノオヌシ》と云ふ者に賜物を下さつた。それは絹五百匹、絹糸四百卷、金鍬一萬挺下さると云ふことが歴史に載つて居る。一萬挺の金鍬を下さると云ふことは如何に其ときの生産力があつたかと云ふことが分る。其頃はまだ都附近だけが鐵の鍬ばかり使つて居りました。田舍へ行けば木の鍬も混ぜて使つて居たことゝ思ふが、使つて見て木の鍬よりも鐵の鍬の方が良いから出來る限り皆鐵鍬を使ひ、期年にして皆鐵の鍬となつた。然るに英吉利はどうかと云ふと十世紀頃まだ木の鍬を使つて居つた。其農業状態は日本の方が餘程進んで居つたのです。是は唯鍬一つのことですが鍬を造ると云ふことは鐵を採る技術があると云ふことである。其多くは砂鐵です。其砂鐵を溶かして
前へ
次へ
全41ページ中20ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
竹越 与三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング