取つたり卑怯なことをして勝つてはいかぬ、立派に勝たなければならぬと云ふやうな一種の道徳が其處から守り立てられて、所謂武士道の本となつて來たのであります。それを我國では武士道は日本專有のものと言ひますが、西洋も皆共通です。西洋には諸君が御承知の通りナイト若くはシヴアーリーと云ふのがあります。所謂飜譯して騎士と云ふのです。シヴアーリーと云ふものは何かと云ふと貴族に仕へて其貴婦人の前では跪いて禮儀をする、婦人を保護すると云ふことがシヴアーリーの役目であると云ふやうに段々盛立てられて、それが終ひには一變してゼントルマンの紳士道になつて來たのである。此シヴアーリーが一種の日本の武士道と同じくナイト・フードと云ふものがありまして戰場に於て手柄を立て立派なことをした者は、王樣が刀の背を以て脊中を三つ叩く、之が即ち名譽を與へたのです。其名譽を受けた者は世間から非常に褒められると云ふやうなことで、名譽と權力を以てシヴアーリーの道徳は成立つて來ましたが、ラスキンと云ふ學者はシヴアーリーとは何ぞ、一本の劍、一匹の良き馬、一日食べられるだけのものがあれば滿足して公の爲に戰ふのが之がシヴアーリーであると言つたが
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