ただ》小僧の声ばかりが岸まで聞こえていた。
「馬鹿ヤーイ。態《ざま》を見ろヤーイ。小便引っかけられやがったヤーイ」
四
船が向う岸に着くと、小僧は十三人を船から卸《おろ》して、家はどこだと聞いて見ると、皆この国の都の貴《たっと》い人々の子供ばかりで、中にも一番小さい七つになる児《こ》は天子様のお世継ぎの太子様であった。或る日、十三人は揃って川遊びに行った途中、お伴の者の船にはぐれて悪者共に捕えられたのであった。小僧はそれでは都まで送ってやろうと約束すると、皆泣いて喜んだ。それから小僧は十三人を、一番小さい太子様から順々に一列に並べて、青い壺を胸の処に掛けさせて都の方へ出発した。そして口々に次のような歌を唄わせた。
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私達は都の子供
都合合せて十三人
生き肝取りにかどわかされて
手をば縛られ口ふさがれて
青い壺をば背に負わされて
歩け歩けと打ちたたかれて
野越え山越え悲しい旅路
泣いても泣いても声は出ぬ
船は帆揚げて潮越えて
砂の浜辺に座らせられて
胸を割《さ》かれてしまったならば
あとに残るは只生き肝と
肝を封じた青い壺
不思議の生命《い
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