猿小僧
夢野久作
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)洞穴《ほらあな》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一枚|懐《ふところ》から出して
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから1字下げ]
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一
一人の乞食の小僧が山の奥深く迷い入って、今まで人間の行った事のない処まで行くと、そこに猿の都というものがあった。
猿の都は広い野原と深い森に囲まれた岩の山で、その岩には沢山の洞穴《ほらあな》が出来ていて、まるで大きなお城のようになって、その中に沢山の猿が住まってキャッキャと騒ぎまわって日を送っているのであった。乞食小僧がそこへ来ると、猿共は人間を珍らしがって大勢まわりに集まって来たが、何と思ったか、皆で小僧を担《かつ》ぎ上げて、お城の奥深く住んでいる猿の王様の処へ連れて行った。王様は大きな猿で、石の椅子の上に枯れ草を敷いて坐っていたが、乞食小僧を見ると驚いて岩の天井に駈け上った。けれども小僧は落ち付いて、街で貰った煎餅《せんべい》を一枚|懐《ふところ》から出して王様に遣ると、王様は大層嬉し
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