かったらしく、家来の猿共に云い付けて果物を沢山持って来《こ》らして小僧に遣った。小僧は果物が大好きであった。そして、こんな沢山喰べ物があるならば、街で乞食をしているよりもここに居る方がずっといいと思った。
 翌《あく》る日から乞食小僧は猿共と一所になって遊んだ。そして先《ま》ず白い木の皮で冠《かんむり》を造って、赤い木の実で染めて、王様に冠せてやった。王様は喜んで、又沢山果物を呉れた。それから小僧は木の枝を集めて自分の家を造った。そして、感心して見ている猿共にも造ってやった。その他、小僧はいろいろな良い事を猿共に教えてやった。谷川に橋を掛ける事。怪我をした時に赤土を押し当てて血を止める事。渋柿を吊して露柿《ほしがき》を造る事。胡栗《くるみ》を石で割って喰べる事。種子《たね》を蒔《ま》いて真瓜《うり》を造る事。
 その代り少年は、猿からもいろいろな軽業を習った。木登り方は先生の猿よりも上手になった。綱渡りも名人になった。枝から枝へ飛び渡ったり、足を引っかけてブラ下ったり、身の軽い事鳥のようで、地面の上を歩くよりも木の上を駈けまわる方がずっと早い位になった。その中《うち》に猿の言葉はいうに
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