及ばず、いろいろな獣《けもの》や鳥や虫の言葉まですっかり記憶《おぼ》えてしまったので、今は遊び友達が大変に殖えて、いよいよここが面白くて面白くて堪らないようになった。
二
すると或る日の事、猿の王様の処で大変な評議が始まった。それは一匹のカナリヤが知らせに来たので、何でも山一つ向うに狼の強盗が沢山集まっていて、「猿の癖《くせ》にお城に居るなんて生意気だ。これから攻め寄せてお城を取って、手向いをする奴は片っ端から喰ってしまおうではないか」と評議していると云うのであった。
これを聞くと猿共は、赤い顔が青くなる程驚いていろいろ相談をしたが、何しろ喧嘩《けんか》ずくでは狼に敵《かな》わないから一層《いっそ》の事、狼に喰い殺されないうちにここを逃げ出して、他の所にいい住居《すまい》を探そうという事に決めた。けれども小僧はこれを押し止めて、猿共を皆|洞穴《ほらあな》の中に隠して入り口を塞《ふさ》いで、自分一人森の外に出て狼の来るのを待っていた。
狼はとうとう或る夜やって来た。その数は何千か何万かわからぬ程ヒシヒシと猿の都を取り巻いて、先ず一時に鬨《とき》の声を挙げて大波の打
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