と》嘘を吐《つ》いて嘲弄《からか》ったのさ。態《ざま》を見ろヤイ」
 と云いながら、親分の顔にプッと唾《つば》を吐きかけた。親分は「奴《おの》れ」と云い様《ざま》、小僧の胸を目がけて庖丁をグサと突き立てた。けれどもその胸は板のように固かった。ハッと驚いてよく見ると、庖丁は木の幹に突っ立っていて、小僧の姿はどこへ行ったかわからなかった。
「ヤーイ。馬鹿野郎。間抜け野郎。ここまでお出《い》で。甘酒進上」
 と云う声が木の上からきこえて来た。それと一所に水がバラバラと降って来た。見ると小僧はいつの間にか木の上に駈け上って、三人に小便をしかけていた。三人は怒るまい事か、庖丁を口に啣《くわ》え、手《て》ん手《で》に木に登り初めたが、三人が小僧の傍まで来ると、小僧は又一段高い処に登って散々に悪態を吐《つ》いた。三人は益《ますます》憤《おこ》って、どこまでもと追いつめた。そしてとうとう一番|天辺《てっぺん》まで来ると、小僧は鳥のように隣りの木の枝へ飛び移って、スルスルと地面へ辷《すべ》り降りて砂原へ来て、十三人の子供を船に乗せて帆を揚げた。三人の悪者が木から降りた時は、船はもう沖の方へ出ていて、只《
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