様が云うには、人間の肝は猿の肝より小さいからそんなにビクビクするのだ。俺は今七八ツ程肝を仕舞って、時々出して洗濯しているが、欲しければ新しいのを一つ遣ろう。その代り今持っているのを棄ててしまえというのです。けれども私はどうしたら肝を出していいか分らないから、誰か肝を取る事の上手な人に頼もうと思ってここまで来たところです。丁度いいから取って下さい」
「ハハハハ。貴様は馬鹿だな」
「馬鹿じゃありません。本当に頼むんです」
「ウン、そんなら取ってやろう。その代り少し痛いからじっとしていなくちゃ駄目だぞ」
「痛い位驚きません」
「よし。こちらへ来い」
と云って、親分は一本の大きな樹の下に連れて行った。小僧はその幹によりかかって、胸を開いて、
「さあ取って下さい」
と云いながら突き出した。あとからついて来た二人の男は驚いて、
「馬鹿な小僧だなあ」
と云った。
けれども親分らしい男は黙って、今磨いだばかりの庖丁を小僧の眼の前に突きつけて、睨み付けて云った。
「さあいいか」
これを見ると、小僧は急に高らかに笑い出した。
「アハハハ。お前達に肝を取られるような間抜じゃない。今のは鳥渡《ちょっ
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