前の砂原に着いて帆を卸《おろ》した。そしてその中から、三人の荒くれ男が七八ツ位から十二三位の美しい子供を都合十三人、猿轡《さるぐつわ》を噛《か》まして後手に縛ったまま引きずり出して、砂原の上に坐らせた。そしてその前に一つ宛《ずつ》青い壺を据えて、その横で三人共庖丁を磨《と》ぎはじめた。
「これは生き肝《きも》取りに違いない。助けてやろう」
と小僧は思った。そうしてつかつかと傍《かたわら》に近寄って、一人の男に向かって、
「もしもし。私の生き肝を序《ついで》に一つ取って下さい」
と頼んだ。荒くれ男は三人共、不意に奇妙な子供が出て来た上に、こんな大胆な事を云ったので、驚いて顔を見合わせた。けれどもやがてその中《うち》の親分らしい一人は眼をギョロリと光らして、気味悪く笑いながら、
「ウン。取られたければ取ってやらん事もないが、一体何だってそんなに肝が要らなくなったんだ」
「私は今までこの山奥の猿の都に居たんです。そして猿共と一所に木登りをするけれども、木から木へ飛び移ったり綱渡りをするのが恐ろしくて恐ろしくて、どうしても猿共に敵《かな》わないんです。ですから猿の王様にそのわけを聞くと、王
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