んど全部積荷がから[#「から」に傍点]になつて、滿載吃水線の白い記號が水面から一メートル半も上の方に浮き上つてゐた。しかし、一度荷揚をした貨物のうち、アントワープ行の分だけは、或る有力な方面(日本の官憲ではない)の仲介に依つて差押を免かれ、その代りまた積戻しをすることになつた。ところが、二十三日は土曜日、二十四日は日曜日で、役人も人足も働かないので、二十五日の早朝からその分の積込みを半日ですませ、その日の午後出帆ができるといふことに決定した。
 船に乘り込んでから十日目、ボルドーに着いてから二十四日目に、とにかく鹿島丸は「ホテル」から「船」に還り、イギリスへ向つて錨を捲き上げた。

      附記

 フランス在住の日本人避難者を乘せた鹿島丸は、九月二十五日午後四時三十分バッサン・アヴァルの岸を離れて、ガロンヌ河を九〇キロ下航し、ビスカヤ灣を横斷して、人人の心配の種となつてゐたイギリス海峽をずつと東の方に見て、セント・ヂョーヂ海峽に入り、二十八日の明け方、やつとリヴァプールに着いた。
 地圖で見ると緯度でわづかに七度ほど北上するので、横濱から八戸の先の鮫港までぐらゐの航行に過ぎないわ
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