た。トゥールを右の方へ引き離して走つてるのだとすると、私たちの列車はポアティエをば通らないで、リモーヂュの方へ進んでるのだらうか? 地圖で見ると、さうとしか思へなかつた。私は隣りに立つてる瘠せた小さい男に聞いて見たが、彼もどこを通つてるのか知らないといつた。彼は今夜はアンダイエに泊つて明日エスパーニュの弟の所へ行くのだといつてゐた。
――エスパーニュはどこへ?
――トロサ。
と彼は答へた。トロサは私は何度も通つて知つてる所だつた。私のベレ帽もトロサの製品だ。ベレ帽はバスクの固有のもので、フランスでもそれをかぶつてゐるのをたくさん見るけれども、本場はトロサだとエスパーニャ人は威張つてゐた。
さつきの青年がまた人を掻きわけて通りかかる。小さい女の子をつれてゐる。その女の子が便所へ行くのを手傳つてるのである。便所の前には人がいつぱい立ち塞がつてゐた。その人たちに道をあけてもらひ、女の子を中へ入れて、彼はドアの前に立つてゐる。さういへば、彼はさつきも他の一人の女の子をつれてゐた。私は彼に話しかけた。
――ボルドーには何時に着くでせう?
――六時頃の筈ですが、おくれるでせう。
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