の中に一人の母親が二人の子供をつれて皺くちやにされながら、大きなトランクを窓ぎはに立て、その上に小さ小方の女の子を腰かけさせ、大きい方――といつても六七歳――の男の子と自分でそのトランクを支へてるのが氣の毒なので、大事な座席を私はその婦人にゆづつてやつた。彼女は一應辭退したが、それでも喜ばしさうに腰かけ、女の子を自分の膝の上に抱へた。しかし、かよわい子供の手一つでは動搖するトランクを支へることはできないので、私がその傍に立つて力を貸してやらねばならなくなつた。そのため、私は不安な足で立つだけでなく、その厄介物の動搖に抵抗するだけの勢力をも寄與することになつたので、疲勞を早める結果になつた。
 更にわるいことに、私は私たちの列車の進行の經路を知らなかつた。ボルドーを通過してエスパーニャの國境まで行くことは知つてゐたけれども、ボルドーまでどの線路を通るのだか確かめてなかつた。確かめる暇さへなかつたことは讀者も知つてゐられる通りである。私はすでに二度ボルドーを通つた經驗があるので、いつもの如く、オルレアンからトゥールに出てポアティエを通るものとばかり思つてゐた。ところがさうでなかつた。
 オ
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