。これがイギリス人だつたら、決してこんな露骨なエゴイズムは見せられないだらうにと思つた。
しかし、あきらめのいい人たちは初めから廊下の窓ぎはに竝んで立つてゐた。私もその仲間に加はらうと思つた。けれども二つのスーツ・ケイスを何とかしなければならなかつた。氣がつくと、鍵の手に引つ込んだ便所の前に幾らか餘地があるので、その横手の方にそれを立てかけ、更によく見ると、便所と脊中合せになつた隅に、車掌用のものと見えて、一つの小さい腰掛が羽目板にくつつけてはね上げてあつた。私はそれを下して、その上に腰を据ゑた。私は青年の頃腸チブスをわづらひ、その餘病として左足に靜脈の結滯ができて惱んだことがあつた。その後一と通りは癒つたけれども、登山をするとか、あまり長く坐つてるとか、あまり長く立つてるとかすると、一種の麻痺状態を來たして苦しむことがあるので、日頃から足だけは大事にしてゐる。それで、よいものを發見して一安心したものの、その安心も長くは續かなかつた。
私たちの列車はオーステルリッツでまたうんと人が乘り込み、殆んど超滿員の状態になり、廊下も便所の前も文字通り立錐の餘地もないほどに埋まつてしまつた。そ
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