見し、私たちは挨拶した。二十七人の女子供の一行に交つてそれを宰領して日本まで同行するS氏にも逢つた。
――なにしろこんな状態で、餘分の座席が一つきりないものですから。
――いや、ありがたう。私の方は御心配なく。
そんなことを手短かに話し合つた。私は十一時の列車には乘れないものとあきらめてゐた。しかし、もしかして他のどの列車かに乘れたら乘るつもりでスーツ・ケイスは二つ用意して來てゐた。それを赤帽に持たせて、ボルドーまでの切符を買はせようと試みた。
赤帽は、二等でも一等でもよいかと聞いた。もう三等は昨日のうちに賣り切れてしまつたさうだ。私は二等を希望するけれども、一等でもかまはないと答へた。
赤帽は私をつれて案内所へ行き、顏なじみらしい男と談判してゐたが、うまく一枚だけ手に入れることができた。すると彼は私の大きい方のスーツ・ケイスをいきなり肩にかつぎ、今一つの方を手に提げて、
――早く、早く、ムッシュ!
とせき立てる。どうしたのかと思ふと、私の座席劵は十時半發の列車なので、もう時間がないといふのだつた。
私は驚いた。さよならをいふ暇もなかつた。構内は瞬間ごとに人が殖え、どこに
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