。もつと早く起きて今頃は山にかかつてゐなければならぬ頃だと思つた。
馬を一時間の餘待たせた末、ホテルの裏は道がわるいからといふので、湖水の西端までボートで行くことにして、其處へ馬を廻はして置けと云ひつけた。ホテルを出る時には、昨日着いた時と反對に、日本風の宿屋よりもコンフォタブルだねといふ人があつた。ベッドの寢心地のよかつたのが理由であつた。
ボートから上つて、雜木林を一丁ほど歩いて、只《と》ある空地《あきち》に出ると、其處に六頭の馬と六人の馬子が私たちを待つてゐた。軍隊生活をしたF君を除く外は馬には皆未經驗と云つてよい者ばかりであつた。皆んながおとなしい馬はどれだと云つた。けれども或る一頭を除く外は皆牝馬であつた。その一頭も去勢馬であつた。青楓君が一番にそれに乘つて、外の者が順順につづいた。殿《しんが》りのF君の外は皆んな口綱を取つてもらつた。
道がすぐ崖の上に出た。右は山の側面であるけれども、馬は人の氣も察しないで左の崖の端を歩いて行く。そのわけを口取の親爺に聞いて見ると、毎日荷物を運んでゐる馬だから荷物が山の側にさはらないやうに端を歩く癖が出來てゐるのだといふことだつた。や
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