、その割によく保存されているので、石造建築の寿命の長さというものが今更のように考えられる。そのことはエジプトでは、その二倍以上の寿命を保っている実例を見て、もっと痛切に感じられるのであったが。
正面に緑色の斑のあるチポリーノ大理石の円柱の二十本ばかり並んだ柱列を見て玄関にかかると、白髪のびっこの老案内人が出て来て私たちを迎えた。至って閑散と見えて鄭寧に説明してくれたけれども、くわしいことは『ベデカ』にでもゆずり、印象の深かった部分だけを書いて見ることにしよう。
構造は長方形(長さ約一五〇米、幅約一〇〇米)で、中央に柱列を四方に繞らした大きな中庭があり、北側と南側に三つずつ部屋がある。北側の中央は玉座のある部屋で、サン・ピエトロの内陣よりも大きいといわれるが、玉座の上の天蓋は取り去られ、六つの壁龕の円柱は運び去られ、壁龕に台座のみは残ってるが、その上に立っていた彫像か鋳像か知らないがそれ等は盗み取られ、壁の大理石も剥ぎ取られ、天井も床も無装飾になっていて、当初のきらびやかさを想像することは困難である。
その東隣りは礼拝堂で、右隣りはバジリカである。礼拝堂には王家の守護神が安置されて
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