パラティーノ
野上豊一郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)銭葵《ぜにあおい》の

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)六百|米《メートル》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「王+分」、第3水準1−87−86]岩
−−

    一

 まだローマになじまないうちは、あまりに多く見るべき物があるので、どこへ行っても、何を見ても、いつもあたまが混迷して、年代史的に地理的に整理しながらそれ等を見ようとするのにかなり骨が折れた。例えばフォーロ・ロマーノ(フォルム・ロマヌム)一つ見るにしてもそうである。古代ローマの最大の広場とはいっても、パラティーノ、カピトリーノ、ヴィミナーレ、エスクィリーノの四つの山の谷間に横たわる長さ六百|米《メートル》にも足りない細長い面積ではあるけれども、其処には紀元前六世紀頃からの各時代各種の建物の遺物が堆積していて、なかなか一度や二度の訪問では、様式の変遷とか素材の種類とか、またそれに関連した昔の市民の信仰の
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