仰いで坐ってる群像がある。エトルスクス時代の製作で、昔はパラティーノのルパルカルに在った。その牝狼の首は今日でもイタリア政府の発行する国立博物館の入場券に黄色の紙に赤く大きく刷り出されてある。
伝説ではロムルスは弟のレムスを殺してローマの創始者となったといわれてるが、今日の学説では、ロムルスという個人があったことは否定され、種族の名前だと解されている。種族的には原型のラテン族だとも、また一説ではエトルスクス族だともいわれる。そのロムルスに依っての最初の民族的結合は紀元前八世紀の中頃で、伝説で伝えられた紀元前七五四年という建国の年は不合理でないと承認されている。
しかし、その時初めてローマに人間が現れたのでないことはいうまでもない。テベレの流域には紀元前二五〇〇年頃からすでに新石器時代の人種が生活していた。恐らくリビュアやマウレタニアの牧草地帯からイベリア半島を通って移住したもので、テベレ沿岸の樹林を伐り開いて、狼・熊・野猪などの迫害に悩まされながら、牧畜を生業としていた。其処へ、紀元前一七〇〇年頃から新しい民族がドナウ流域から移入して、青銅の武器を以って先住者を駆逐した。此の新来者
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