ュリアとか、クリアとかレジアとか、或いはアントニウスがケーサルの追悼演説をしたといわれるロストラとか、そういったものを見て歩きながら、すぐ南の方に高さ五六十米の褐色の煉瓦で固められた断崖が長くつづいて、月桂樹や糸杉でその上を縁どられ、美しい景観を作り出してるのを見落した筈はないだろう。それがパラティーノの山の北の端で、ローマ民族の伝説的発祥の地として昔から神聖視され、また帝国時代の初期には歴代の皇帝が宮殿を営んだ所として有名である。
パラティーノは謂わゆるローマの七つの山――前記の四つの山の外に、クィリナーレ、ツェリオ、アヴェンティーノ――の中で、中央に位して他の六山を三方に配置し、西側はテベレの流に臨み、しかも孤立した丘陵となってるので、最も要害堅固の城砦として役立った。伝説に拠ると、山の端に一本の無花果の木があり、その下で牝の狼がロムルスとレムスの双生児を育てた。そのロムルスが成長してローマ建国の大祖となったのである。カピトリーノのパラッツォ・デイ・コンセルヴァトーリ博物館に「ルーパ・カピトリーナ」と称する青銅の大きな牝の狼が乳を垂らして立ってると、二人の小さい子供がその下に乳を
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