かった方が興味がある。同じドイツの都市にしても、ハイデルベルヒとかフランクフルト・アム・マインとかニュルンベルヒとかになると、十分に旅行者を楽しませるものがあるけれども。
 オランダも大体において旅行者を楽しませるものを持っている。殊に私たちの行った時は、春が酣《たけな》わになりかけて、気候はよく、木木は芽を吹き、花は蕾を破って、どこを見ても美しく、ハーグも、ライデンも、ユトレヒトも皆美しかったが、殊にハーグからライデンへドライブした時に通った沿道の花畠の美しさは決して他国では見られないものだった。それはテューリップ畠と、アネモネ畠でひろびろとした耕地の間に途方もなく大きな毛氈を敷きひろげたように、しかも、このテューリップ畠は赤は赤一色、黄は黄一色、白は白一色で、中に紫はアネモネの花畠だった。このテューリップの大量栽培は、花は剪《き》ってロンドン、パリ、ベルリン等へ出すが、目的は球根をアメリカへ輸出するためである。
 しかし、テューリップもアネモネも美しければ、バタ・チーズ・野菜・卵等の産出も多量であれば、また風車もおもしろければ、運河・堤防も珍らしかったが、それ等にもまして私にいつま
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