でも忘られない印象を与えたものはオランダの絵画であった。殊にレンブラントの作品であった。
三
レンブラントとかフランス・ハルスとかヤン・ステーンとかを除けば、正直にいうと、私はオランダの絵画についてあまり多く知らなかった。ロンドンの博物館で初めて多くの実物に接し、後ではパリでもベルリンでもミュンヒェンでも数多くオランダの画を見る機会を持ったが、しかし、最も系統的に且つしみじみとそれ等に親しむことのできたのはオランダの博物館であった。殊にハーグのマウリツハウスとアムステルダムの国立博物館《リイクスムゼウム》であった。
一般的に見て、オランダの画は目立って手堅い写実の基礎の上で発達している。一方では風景・静物などの地味な画題をいかにも細かく精密に写生してるかと思うと、また一方では風俗画ともいうべき種類のものを多少のヒューマーを交えながら巧みに描き出している。そうして、概して小さい作品が多く、中には微細画《ミニアチャー》といえるような作品も少くない。そういった行き方が流行したというのも、主として国民性と国情に因るものであって、オランダがヨーロッパの北に偏したテュートン民族の国
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