水を汲み上げて運河に移す役目をもさせられている。
二
オランダのそういった風土的特色は、都市殊にアムステルダムとかロッテルダムとかいったような海港都市ではあまり見られないといったが、それでもレンブラントが一六四〇年に写生したアムステルダムの風景画(エッチング)を見ると、高塔の聳えた建物と並んで大きな風車が幾つも立っていて、前景は水草の生えた沼が荒地の景観を呈している。だから、その頃はオランダが航海と貿易によって富裕になりかけた時代で、アムステルダムなどはすでに国際都市的性質をおびていたといわれるにも拘らず、まだそういった田園的特色が見られていたものと思われる。今日でも、ハーグ、ライデン、ユトレヒト、ハーレムなどでは、大体からいって、町は近代化されてありながらも、なお昔を思わせるものが少なからず残っている。旅行者にとっては、それが大きな魅力である。
しかし、オランダ人としては、すべての都市が早く近代化して、アムステルダムの如くロッテルダムの如くなることの方が或いは望ましいのではないかとも思える(その証拠には、ハーグの新区域ムッセンベルクの住宅街の如きは、ベルリンの郊外にで
前へ
次へ
全27ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
野上 豊一郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング