坦なのと国の狭いのがそれに都合がよいからに相違ない。
 一体オランダほど風土が国民の生活に影響を及ぼしてる国はヨーロッパのどこにも見出せない。国内の或る部分では、地面が海面よりも低いので、堤防が到る所に築かれてあることは既に述べたが、その堤防の上には楊柳の枝などをかぶせて泥で固め、それを数年ごとに取り替えねばならないので、その費用だけに年額千五六百万フロリンを支出するそうだ。そういった堤防を必要とする土地が全国の面積の約半分に及んでるということで、オランダの古い諺に「神は海を造った。われわれは陸を造った」というのも、十世紀以来のそういった土木的努力を考えさせるものでなければならぬ。土地が国民の生活を変更したと共に、国民の生活も土地を変更させないでは措かなかった一つの例でそれはある。今一つの例は運河で、これは道路の代用として、また下水の代用として、また都市ではしばしば塀がこいの代用として使用され、都市にも田舎にも無数に開鑿されてあるが、大きいのになると巾十間深さ一間ぐらいのもある。そうして、田舎では、運河の付近には大きな風車が幾つも立っていて、製粉・製材・製紙等に利用されるほかに、低地の
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