に、睦田老人を召喚して立会わせながら厳重な取調べを行う一方に、別の刑事を飛ばして、品川の女郎屋をシラミ潰しに調べ上げると、鬚男が話した通りの人相の男が、昨年の暮に落籍《ひか》した女の写真が手に入った。……と……その夜のうちに二人の敏腕な刑事が、鬚を剃らして変装さしたルンペンと、女の写真を護って、大阪に急行したのであった。
 それから、ちょうど二週間目の夕刊には東京、大阪とも同時に、二人組の強盗が捕まったことを特号標題で報道した。
 尤《もっと》も京阪地方の新聞の大多数は、犯人の足が、意外なところから付いたように書立てていた。つまり被害者の家《うち》には申合わせたようにS・S式軽油ストーブが在ったところから、もしやと思って京阪神地方の煖房具店を調査すると果せる哉《かな》、東京から廻送して来た写真の女が開いている軽油ストーブ店が三の宮で発見されると同時に、その店の主人と雇男《やといおとこ》が犯人に相違ないことが判明したものである。しかもこれを白昼に襲撃して一挙に三人を逮捕することが出来たのは、何といっても当局の偉功であると、極力賞讃しているのであったが、これに対して東京の新聞は申合わせたよ
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