い同志を吹き飛ばす位で御座いました。そうしてその溜め息が終るのを待って、不賛成者の起立を要望しました裁判長の声も、再び起った歎息の渦巻きによって答えられるばかりで御座いました。
私達兄弟はそのような緊張した空気の中を相並んで裁判長の前に進み出まして、運命の切迫にわななく指で、受験の順番をきめる籤《くじ》を引きましたが、第一番の籤はどうした廻り合わせか弟に当りましたので私はガッカリしてしまいました。……赤ん坊は今スヤスヤと眠っているのですから、ソッと抱き取れば、わからないかも知れないのです。そうして丁度その次に私が抱き取る時に眼を醒ましてヒーヒー泣き出すかも知れないと思ったからです。……私はその時にこの裁判法の不公平を主張しなかった事を心から後悔しましたが、もう間に合いませんので、全身の血がカーッと頭に上って来るのをジッと我慢しながら、弟のする事を眼も離さずに見ておりました。
ところが結果は案外な事になってしまったのです。案外にも意外にも、私は自分の顎が外れたのに気が付かなかった程の、驚き呆れた結論があらわれて来たのです。
神ならぬ弟のマチラ[#「マチラ」は太字]は、そんな事になろ
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