霊感!
夢野久作
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)閑《ひま》つぶしに
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)今|先刻《さっき》の事でしたから、
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「オルデスオル」は太字]
−−
――これは外国のお話――
「ゲーッ。ゲーッ。ガワガワガワガワガワ」
という嘔吐の声が、玄関の方から聞えて来た……と思う間もなく看護婦が、
「……先生……先生……急患です……」
と叫びながら薬局を出て来る気はいがした。ドクトル[#「ドクトル」は太字]、オルデスオル[#「オルデスオル」は太字]、パーポン[#「パーポン」は太字]は顔を上げた。夕食前の閑《ひま》つぶしに読んでいた小説を、太鼓腹の上に伏せて、片手で美事な禿げ頭をツルリと撫で上げながら、大きな欠伸《あくび》を一つした。
「アーッ。ウハフハフハフハフィット……と……何だろう一体……嘔きよるらしいが……まだ虎列剌《コレラ》の出る時候じゃないようだが……」
こんな独言《ひとりごと》を云っているうちに患者はもう、看護婦の先に立って、診察室
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