わば超常識的、もしくは超学理的の事実を根拠としたものであるから、あるいは牽強附会の誹《そしり》を免れ得ないであろう事を本官は最初から覚悟しているものである。
故に本官は今日只今職権を以てこの手段をこの法廷に強いようとするものではない。ただ、この方法以外にこの裁判を確定する手段は、恐らく絶無であろう事を信ずるが故に、敢て御迷惑をもかえり見ず、斯《か》く多数の御出席を要望した次第である。すなわち現代の常識を代表する陪審員諸氏。……科学智識を代表する参考人諸氏……及び……ハルスカイン[#「ハルスカイン」は太字]、イグノラン[#「イグノラン」は太字]両家の家庭の内事に対して、多少共に発言権を有しておられる限りの紳士淑女のすべてをこの法廷に招集して、その『かくの如き解決手段を用いるの止むを得ざるに出でた理由』を訴え、その公明正大なる判断による満場の御賛同を得た後に、この解決方法を採用したいと考えている者である。
然して、この前代未聞の裁判を確定したいと希望している者である」
(7)[#「(7)」は縦中横]
この演説が終りました時に満場の官民が一度に吐き出した溜め息は、お互
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