得るであろう。
しかもこの『下等な生物ほど霊感が発達している』という原則こそは、本官が採《と》って以《もっ》て、この裁判に応用して、最後の断案を下さむと欲する、所謂第二の手段の憑拠《ひょうきょ》となるべき、根本原則に外ならないのである。
すなわち当法廷に参列しているレミヤ[#「レミヤ」は太字]所生の男児は、まだ東西を弁ぜざる嬰児《えいじ》である。しかも本官の調査するところに依れば、生れ落ちると間もない頃から母親の手に抱かれている間だけ温柔《おとな》しく、安らかに眠るに反して、他人が抱き取ろうとすると何もかもなく泣き出す習性がある。すなわちその真実の親を区別する霊感の如何に明敏なものであるかという事実を日常に証拠立てているものと認められるのである。
本官は確信する。レミヤ[#「レミヤ」は太字]の児は同じようにして本当の父親をその霊感に依って容易に区別し得るであろう事を……アルマ[#「アルマ」は太字]とマチラ[#「マチラ」は太字]の二人の中、自分の父親でない方が抱いたならば直ぐに泣き出すであろうと同時に、本当の父親が抱いたならば直ぐに泣き止むであろう事を……。
但し……この方法はい
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