一粒種となっているレミヤ[#「レミヤ」は太字]に対する恋愛に就いて、法律以上の法律、道徳以上の道徳を尊重した結果として惹き起された、超自然的な訴訟事件であって、現代の法律、科学智識、もしくは常識を以てしては永久に判決を下し得ざる奇怪、不可思議を極めた事件である。故にこれを解決しようとするには、現代の法律、科学智識、もしくは常識を以てしては到底測り得べからざる天の配剤による自然の解決[#「天の配剤による自然の解決」に傍点]を待つより外に方法はないと信ずる者である。
ところで……ここに本官が云うところの、天の配剤による自然の解決法[#「天の配剤による自然の解決法」に傍点]なるものは僅かに二種類しかないのである。その一つは誰人も考え得るであろう通りにこの裁判を無期延期とする事である。そうして二人の父親の中のいずれかが死亡、もしくは他の恋愛によってレミヤ[#「レミヤ」は太字]と離れ去る事によって解決されるのを待つ方法であるが、しかし、そのような解決手段は、法律、道徳、常識のいずれから見ても許さるべき事ではない。レミヤ[#「レミヤ」は太字]所生の男児をそのように永く無名の子として放置しておく時
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