の陪審員、参考人として列席した博士教授連、又は各地から特別に傍聴に来た法官連、ハルスカイン[#「ハルスカイン」は太字]、イグノラン[#「イグノラン」は太字]両家の親類縁者、家庭関係の人々の礼服、盛装姿なぞで、さしもに広い法廷も立錐の余地がないくらい……普通の傍聴人や新聞社関係の人々は一人も入場を許さなかった故《せい》か法廷内の空気は一層物々しく厳粛を極めておりましたようで……その真ん中に、私と弟とは、スヤスヤと眠った赤ん坊と、それを抱きかかえたレミヤ[#「レミヤ」は太字]を挟んで、小さくなって腰を卸した事で御座いました。
サテ……そうした緊張した気分の中に参列者一同が裁判の内容に就いて秘密を守る旨の宣誓が終りまして、書記が今までの事件の経過を読み上げ終りますと、裁判長のウイグ[#「ウイグ」は太字]氏は徐《おもむ》ろに壇上に立ち上りまして、咳一咳、次のような演説を初めました。
「本官は只今からこの事件に対する最後の解決法に就いて説明しようとする者である。
本事件は元来アルマ[#「アルマ」は太字]、マチラ[#「マチラ」は太字]の双生児兄弟が、ハルスカイン[#「ハルスカイン」は太字]家の
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