にかけます。私独特のステキな秘伝があるのですからね……サア。安心してモットこっちへお寄りなさい。ソウソウ……そうしてハンカチ[#「ハンカチ」は太字]をお取りなさい。……オイオイ……お前は何をボンヤリそこに突立っとるのか。……早くお客様に差し上げる紅茶を持って来んか。熱いのをすぐに持って来い。……それからお嗽《うが》いの水も……塩をすこし余計に入れてナ……エエカ……すぐに持って来るんだぞ」
こう云って看護婦を叱り飛ばすと、ドクトル[#「ドクトル」は太字]は今までと打ってかわった得意満面の態度で、白い診察服を二ノ腕までマクリ上げた。患者のヌルヌルした涎《よだれ》だらけの唇の左右へ、拇指《おやゆび》を容赦なくグイグイと突込んで、左右の顎の骨を両手で力強く引っ掴んだが、そのまま患者のヒンガラ眼を覗き込むように睨み付けると、室中に響き渡るような大きな声で怒鳴り付けた。
「……あなたは何という馬鹿ですか。……立派な礼服を着ていながら、何だって顎を外すようなヘマな事をしたんです……エエッ……この大馬鹿野郎の、大間抜け奴《め》がアッ」
患者はこれを聞くと血走った白眼をグルグルと回転さした。ビックリ
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