ともレミヤ[#「レミヤ」は太字]の幼友達でありながら、一度もレミヤ[#「レミヤ」は太字]に手紙を出した事がない……のみならず学校を出てから後の居所も知らさないでいる事を、その時初めて気付いたのだそうです。そうしてそれと同時に私達二人の心づかいと、兄弟仲の親しさを、察し過ぎるくらい察してしまいましたので、その感心のしようというものはトテモ尋常ではなかったそうで御座います。二人が同時に涙を一パイ溜めた顔を見合わせて、
「二人が双生児でなかったらネエ。アナタ」
「ウーム。アルマチラ[#「マチラ」は太字]と名乗る一人の青年だったらナア」
 と同じ事を云いながら、長い長いため息を吐《つ》いたと、後でレミヤ[#「レミヤ」は太字]が話しておりました。
 レミヤ[#「レミヤ」は太字]の話によりますと叔父夫婦はそれから後というものは、その事ばかりを繰り返し繰り返し云って愚痴をこぼしていたそうです。
「ドッチでもいいから一人、自動車に轢《ひ》かれてくれないかナア」
 なぞとヒドイ蔭口を云った事もありましたそうで……。
「お前はアルマ[#「アルマ」は太字]とマチラ[#「マチラ」は太字]とどっちが好きなのかい
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