。レミヤ[#「レミヤ」は太字]の両親の叔父叔母達へも手紙を出さないのは無論の事、自分達の居所も知らさないようにしよう。そうして吾々兄弟は、イクラ間違っても罪にならない位よく肖《に》た双生児の娘を二人で探し出して、同じ処で、同じ日に結婚の式を挙げよう……という事に固い約束をきめていたのです。
けれども先生……世の中というものは思い通りに行かないものですね。私たち兄弟のこうした申合わせは、却《かえ》って正反対の結果を招く原因となってしまったのです。……と申しますのは外でもありませぬ。叔父達老夫婦は前にも申しました通りの熱心さで、色々と婿の候補者を探しまわったのですが、どうしても思う通りの青年が見つかりませぬ。そのうちに一年は夢のように経ってレミヤ[#「レミヤ」は太字]は十八の嫁入盛りになる。自分達の寿命は間違いなく一年だけ縮まったというので、気が気でないままに、閑さえあれば夫婦で額を鳩《あつ》めて婿探しの工夫を凝《こ》らしておりますうちに、叔父と叔母とのドチラが先に気が附くともなく、私たち二人の事を思い出したのだそうです。
叔父と叔母は私達兄弟が極めて近い親類でありながら……しかも二人
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