弟のマチラ[#「マチラ」は太字]と一分一厘違わない。ただ違うところは弟の方が私よりもホンノ少しばかりセッカチというだけですから、誰が見たとて区別が付く筈はありませぬ。向い合って議論したりしているうちに、自分が自分を攻撃しているような妙な気持ちになって、同時に笑い出すような事も度々あった位で御座います。ですから万一私共が一度でもレミヤ[#「レミヤ」は太字]の姿を見ましたならば最後、キット二人が二人とも夢中になって終《しま》うに違いない。そうして猛烈な争いを初めて、今迄の友情をメチャメチャに打ち毀《こわ》して終《しま》うにきまっている。のみならず、たとい万一一方が敗けてレミヤ[#「レミヤ」は太字]を譲る事になったとしても、あとから一方の姿に化けて、隙を見てレミヤ[#「レミヤ」は太字]を誘拐するか、又は一方を殺しておいて、正当防衛を主張するのは何の雑作もない話でつまるところはレミヤ[#「レミヤ」は太字]を世界一の不倖な、恐しい境界に陥れる結果になる事が最初からチャント解かり切っているのです。
私共は……ですから……初めから約束をしまして従妹のレミヤ[#「レミヤ」は太字]の事は夢にも思うまい
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