を冠つたら
殺した友の顔を思ひ出した
ずつと前殺した友へ
根気よく年賀状を出す
愚かなる吾
広重は
惨殺屍体の上にある
真青な空の色を記憶した
煉瓦塀を仰げば
青い/\空
殺人囚がホツとする空
病死した友の代りに返事した
先生は知らずに
出席簿を閉ぢた
秋まひる静かな山路に
堪へ兼ねて追剥《おいはぎ》を
した人は居ないか
人頭蛇を生ませてみたいと
思ひつゝ女と寝てゐる
若い見世物師
* * *
青空に突き刺さり/\
血をたらす
南|仏蘭西《フランス》の寺の尖塔
夜の風に
紙片が地を匍ふて行く
死人の門口でピタリと止まる
真鍮のイーコン像から
蝋細工のレニンの死体へ
迷信転向
*白骨譜
死刑囚は
遂に動かずなり行けど
栴檀《せんだん》の樹の蝉は啼きやまず
神様の鼻は
真赤に爛れてゐる
だから姿をお見せにならないのだ
一瓶の白き錠剤
かぞへおはり
窓の青空じつと見つむる
浜名湖の鉄橋渡る列車より
フト……
飛降りてみたくなりしかな
天井の節穴
われを睨むごとし
わが旧悪を知り居るごとし
青空は罪深きかよ
虻《あぶ》や蜻蛉
お倉の白壁
前へ
次へ
全19ページ中15ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング