にぶつかつて死ぬ
盲人がニコ/\笑つて
自宅へ帰る
着物の裾に血を附けたまゝ
よそのヲヂサンが
汽車に轢かれて死んでたよ
帰つて来ないお父さんかと思つたよ
将軍塚
将軍の骨が棺の中で錆びた刀を
抜きかけてゐた
* * *
青空はブルーブラツク
三日月は死の唄を書く
ペン先かいな
大理石の伽藍の如き頭蓋骨が
荘厳に微笑む
南極の海
ほの暗く
はるかな国離れ来て
桐の若葉に
さゆらぐ悪魔
* * *
わが罪の思ひ出に似た
貨物車が犇きよぎる
白の陽の下
ぬかるみは果てしもあらず
微笑して
彼女の文を千切り棄てゆく
ニヤ/\と微笑しながら跟《つ》いて来る
もう一人の我を
振返る夕暮
* * *
日も出でず
月も入らざる地平線が
心の涯にいつも横たはる
うなだれて
小暗き町へ迷ひ入り
獣の如く呻吟してみる
社長室の片隅に
黒く凋れ行く
赤いタイピストの形見のチユーリツプ
* * *
体温器窓に透かして眺め入る
死に度いと思ふ
心を透かし見る
タツタ一つ
罪悪を知らぬ瞳があつた
残
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