御用です。まあおかけ下さい。この薬です。カプセルに這入っている白い粉末ですが、アイヌが矢尻に塗るブシという毒薬から採った薬です。これをお飲みになれば少くとも二十四時間はどんな劇烈な運動をしても心臓はパンクしません。……オイ! オーイ! この方にプレンソーダを一杯持って来て差上げろ」
 私は夢に夢みるような気持になった。
「しかし……先生のような方が……どうしてコンナ処に……」
「アッハッハッハッハッ。貴方の御運が強いのですね。……実はコンナ処へでも来て息を抜かなくちゃ遣り切れないほど儲かりますのでね。ハッハッ」
「やはり……その動脈瘤の治療で……」
「ナアーニ。動脈瘤の方はタカが知れておりますよ。例の深透レントゲンが大繁昌でね。有閑マダムや有閑令嬢の秘密をワンサ握っているもんですからね。コレで商売が繁昌する世の中はロクな世の中じゃありませんよ。ハッハッハッ」
 私はソーダ水に酔払ったような気持になった。私は古木学士に手を引かれてダンスホールに出た。女を三人も縋り付かせて水車の如く廻転さしてみせた。それから女どもに取巻かれて古木学士と抱き合いながら踊っているうちに、部屋中の灯《ひ》が突然
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