冥土行進曲
夢野久作

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)帷《カーテン》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)火焔|鋩子《ぼうし》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「金+示+且」、第3水準1−93−34]元《つばもと》
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       一

 昭和×年四月二十七日午後八時半……。
 下関発上り一二等特急、富士号、二等寝台車の上段の帷《カーテン》をピッタリと鎖《とざ》して、シャツに猿股《さるまた》一つのまま枕元の豆電燈を灯《つ》けた。ノウノウと手足を伸ばした序《ついで》に、枕元に掛けた紺《こん》背広の内ポケットから匕首拵《あいくちごしらえ》の短刀を取出して仰向になったまま鞘《さや》を払ってみた。
 切先《きっさき》から※[#「金+示+且」、第3水準1−93−34]元《つばもと》まで八寸八分……一点の曇もない。正宗相伝の銀河に擬《まが》う大湾《おおのだれ》に、火焔|鋩子《ぼうし》の返りが切先《きっさき》長く垂れて水気《みずけ》
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