様
皆々様
[#ここで字下げ終わり]
◇第二の瓶の内容
ああ。隠微《かくれ》たるに鑒《み》たまう神様よ。
この困難《くるしみ》から救わるる道は、私が死ぬよりほかに、どうしても無いので御座いましょうか。
私たちが、神様の足※[#「登/几」、第4水準2−3−19]《あしだい》と呼んでいる、あの高い崖の上に私がたった一人で登って、いつも二、三匹のフカが遊び泳いでいる、あの底なしの淵の中を、のぞいてみた事は、今までに何度あったかわかりませぬ。そこから今にも身を投げようと思ったことも、いく度《たび》であったか知れませぬ。けれども、そのたんびに、あの憐憫《あわれ》なアヤ子の事を思い出しては、霊魂《たましい》を滅亡《ほろぼ》す深いため息をしいしい、岩の圭角《かど》を降りて来るのでした。私が死にましたならば、あとから、きっと、アヤ子も身を投げるであろうことが、わかり切っているからでした。
*
私と、アヤ子の二人が、あのボートの上で、附添いの乳母《ばあや》夫妻や、センチョーサンや、ウンテンシュさん達を、波に浚《さら》われたまま、この小さな離れ島に漂《なが》れついてから、もう
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