ん、すみません、すみません。私たちは初めから、あなた方の愛子《いとしご》でなかったと思って諦らめて下さいませ。
 又、せっかく、遠い故郷《ふるさと》から、私たち二人を、わざわざ助けに来て下すった皆様の御親切に対しても、こんなことをする私たち二人はホントにホントに済みません。どうぞどうぞお赦《ゆる》し下さい。そうして、お父様と、お母様に懐《いだ》かれて、人間の世界へ帰る、喜びの時が来ると同時に、死んで行かねばならぬ、不倖《ふしあわせ》な私たちの運命を、お矜恤《われみ》下さいませ。
 私たちは、こうして私たちの肉体と霊魂《たましい》を罰せねば、犯した罪の報償《つぐのい》が出来ないのです。この離れ島の中で、私たち二人が犯した、それはそれは恐ろしい悖戻《よこしま》の報責《むくい》なのです。
 どうぞ、これより以上《うえ》に懺悔することを、おゆるし下さい。私たち二人はフカの餌食になる価打《ねうち》しか無い、狂妄《しれもの》だったのですから……。
 ああ。さようなら。

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神様からも人間からも救われ得ぬ
[#地から2字上げ]哀しき二人より
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お父様
お母
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