うように、高い高い笛の音が聞こえて来ました。その音が、この小さな島の中の、禽鳥《とり》や昆虫《むし》を一時に飛び立たせて、遠い海中《わだなか》に消えて行きました。
けれども、それは、私たち二人にとって、最後の審判の日の※[#「竹かんむり/孤」、第4水準2−83−54]《らっぱ》よりも怖ろしい響《ひびき》で御座いました。私たちの前で天と地が裂けて、神様のお眼の光りと、地獄の火焔《ほのお》が一時《いっとき》に閃《ひら》めき出たように思われました。
ああ。手が慄《ふる》えて、心が倉皇《あわて》て書かれませぬ。涙で眼が見えなくなります。
私たち二人は、今から、あの大きな船の真正面に在る高い崖の上に登って、お父様や、お母様や、救いに来て下さる水夫さん達によく見えるように、シッカリと抱き合ったまま、深い淵の中に身を投げて死にます。そうしたら、いつも、あそこに泳いでいるフカが、間もなく、私たちを喰べてしまってくれるでしょう。そうして、あとには、この手紙を詰めたビール瓶が一本浮いているのを、ボートに乗っている人々が見つけて、拾い上げて下さるでしょう。
ああ。お父様。お母様。すみません。すみませ
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