《はがき》とは相見えず、雑記帳の破片様のものらしく候為め、御下命の如き漂着の時日等の記入は不可能と被為存《ぞんぜられ》候《そうろう》。然れ共、尚《なお》何かの御参考と存じ、三個とも封瓶のまま、村費にて御送附|申上《もうしあげ》候間《そうろうあいだ》、何卒《なにとぞ》御落手|相願度《あいねがいたく》、此段|得貴意《きいをえ》候《そうろう》 敬具
    月   日
[#地から2字上げ]××島村役場※[#丸付き「印」、36−10]
 海洋研究所 御中

◇第一の瓶の内容

 ああ………この離れ島に、救いの船がとうとう来ました。
 大きな二本のエントツの舟から、ボートが二艘、荒波の上におろされました。舟の上から、それを見送っている人々の中にまじって、私たちのお父さまや、お母さまと思われる、なつかしいお姿が見えます。そうして……おお……私たちの方に向って、白いハンカチを振って下さるのが、ここからよくわかります。
 お父さまや、お母さまたちはきっと、私たちが一番はじめに出した、ビール瓶の手紙を御覧になって、助けに来て下すったに違いありませぬ。
 大きな船から真白い煙が出て、今助けに行くぞ……とい
前へ 次へ
全18ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング