。そうして、いつまでもいつまでも清浄《きよらか》にお守り下さいませ。そうして私も…………。
ああ。けれども…………けれども…………。
ああ神様よ。私はどうしたら、いいのでしょう。どうしたらこの患難《なやみ》から救われるのでしょう。私が生きておりますのはアヤ子のためにこの上もない罪悪《つみ》です。けれども私が死にましたならば、尚更《なおさら》深い、悲しみと、苦しみをアヤ子に与えることになります、ああ、どうしたらいいでしょう私は…………。
おお神様よ…………。
私の髪毛《かみのけ》は砂にまみれ、私の腹は岩に押しつけられております。もし私の死にたいお願いが聖意《みこころ》にかないましたならば、只今すぐに私の生命《いのち》を、燃ゆる閃電《いなずま》にお付《わた》し下さいませ。
ああ。隠微《かくれ》たるに鑒給《みた》まう神様よ。どうぞどうぞ聖名《みな》を崇《あが》めさせ給え。み休徴《しるし》を地上にあらわし給え…………」
けれども神様は、何のお示しも、なさいませんでした。藍色の空には、白く光る雲が、糸のように流れているばかり…………崖の下には、真青《まっさお》く、真白く渦捲《うずま》
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