後の事、ウミガメの卵を焼いて食べたあとで、二人が砂原に足を投げ出して、はるかの海の上を辷《すべ》って行く白い雲を見つめているうちにアヤ子はフイと、こんな事を云い出しました。
「ネエ。お兄様。あたし達二人のうち一人が、もし病気になって死んだら、あとは、どうしたらいいでしょうネエ」
そう云ううちアヤ子は、面《かお》を真赤にしてうつむきまして、涙をホロホロと焼け砂の上に落しながら、何ともいえない、悲しい笑い顔をして見せました。
*
その時に私が、どんな顔をしたか、私は知りませぬ。ただ死ぬ程息苦しくなって、張り裂けるほど胸が轟いて、唖のように何の返事もし得ないまま立ち上りますと、ソロソロとアヤ子から離れて行きました。そうしてあの神様の足※[#「登/几」、第4水準2−3−19]《あしだい》の上に来て、頭を掻《か》き※[#「てへん+劣」、第3水準1−84−77]《むし》り掻き※[#「てへん+劣」、第3水準1−84−77]りひれ伏しました。
「ああ。天にまします神様よ。
アヤ子は何も知りませぬ。ですから、あんな事を私に云ったのです。どうぞ、あの処女《むすめ》を罰しないで下さい
前へ
次へ
全18ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング