なければならぬ事になるでしょう……」
「無論ですね……それは……」
「……そこで先ずその第一着手として、自分に嫌疑がかからぬように、亜米利加《アメリカ》に行くと称して家出をした。それから相当の時日が経った後《のち》に姿をかえながら、兇器を携《たずさ》えて源次郎氏を附け狙っていると、そのうちに源次郎氏が、大雪に誘われて狩りに出かけるところを発見したので、好機到れりという訳で、村から遠く離れた、あの山の上の……何とかいう処でしたね……そうそう一本榎に待ち伏せて狙撃《そげき》をした。……ところが雪の中の事ですから、思ったより早く相手に発見されて、第一弾が命中しなかった……というような事も考えられますが、とにも角にもその雪の山上で、物凄い撃ち合いが始まった事は、誰にも想像され得るでしょう。……しかし源次郎氏の武器が二連発の散弾銃で、当九郎の獲物《えもの》がピストルの五連発か何かであったとすると、到底相手にはなり切れないので、源次郎氏は思わず後《あと》へ退《さが》って行くうちに、足場を誤って谷川に墜落した。そこで当九郎はその死骸から貯金だけを奪い取って、二円なにがし入りの蟇口《がまぐち》を故意に
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