りませんか」
「わかりません」
「ハハア。おわかりにならない……イヤ御尤《ごもっと》もです。私の判断の根拠というのは、今も申します通り、極めて非常識なものですからね……しかし或る程度までは常識で説明出来るのです。否《いな》……却《かえ》って私の考えの方が常識的ではないかと思われるのですが……」
「ハハア……それはどういう……」
「……まず……この事件の犯人と目されている今の……エエ。何とかいいましたね。ソウソウ当九郎……その甥の行方不明と、この事件とが結びつけられているのは一応もっとも千万な事と考えられます……というのは、源次郎氏の妻君と、忠義な乳母《うば》のお磯とを除いた村の人間の中《うち》で、源次郎氏が金を隠している場所を発見する可能性が一番強いのは、誰でもない……その甥の当九郎という事になるのですからね」
「いかにも……」
「……一方に叔父御《おじご》の源次郎氏は、変人の常として、存外、用心深いところもあるので、支那人のように全財産を胴巻か何かに入れて、夜も昼も身に着けておく習慣があったかも知れない。それを又当九郎が推察したものとすると、その金を奪うためには是非とも源次郎氏を殺さ
前へ 次へ
全53ページ中36ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング