て月あかりが映《さ》しているので、どこに行ったのか知らんと家の内外《うちそと》を見まわったが、出て行ったあとで又、雪が降ったらしく、足跡も何も見えなかった。それから押入れを開けてみると、自慢のレミントンの二連銃と一緒に、狩猟《やまゆき》の道具が消え失せている。台所を覗いてみると、冷飯《ひやめし》を弁当に詰めて行った形跡があるという訳で、初めて狩猟《かり》に行った事がわかったのだそうです」
「……ヘエ……どうしてそう突然に狩猟《かり》に出かけたのでしょう」
「それがです。それがやはり甥の当九郎が誘《おび》き出したのだ……という説もあったそうですが、しかし一方に源次郎氏はいつでも雪さえ見れば山に出かける習慣があったので、この時も珍らしい大雪を見かけて堪《たま》らなくなって出かけたんだろう……という意見の方が有力だったそうです。……一方には又、そうした習慣があるのを当九郎も知っていたので、そこを狙って仕事をしたんだろうという説もあったそうですが、何しろ本人が唖《おし》に近いくらい無口な性質《たち》だったので、何一つわからず仕舞《じま》いになった訳ですが」
「その前に手紙か何か来た形跡は無かっ
前へ
次へ
全53ページ中22ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング