ころで頭山も俺も睾丸《きんたま》の毛にシラミがウジャウジャしていたから、一つこいつを喧嘩させて見ようではないか。そうして負けた方がここに滞在して小さくなっている。勝った方が金策に出る事にしようではないかと云うと、頭山が面白い、やってみようと云うた。ところが頭山のヤツは真黒くて精悍《せいかん》な恰好をしている。俺のに湧いたヤツは真白くてムクムク肥って活動力がないのでドウ見ても勝てそうにない。しかし俺には確信があったから、新聞紙を四ツに折って、その溝の十文字の処で選手を闘わせてみると案の定俺の白いヤツが黒い奴を押し倒おして動かせない。そこで俺が解放される事になって帰って来た訳だが、ナアニ頭山は正直だから、シラミを逃がさないようにシッカリと抓《つま》んで出すのだから、土俵へ上らない中《うち》に代表選手が半死半生になっている。これに反して俺の方は、選手を抓み出す時から出来るだけソーッと抓んで掌《てのひら》に入れてソーッと下に置くのだから双方の元気に雲泥の相違がある。勝敗の数は勿論、問題じゃないことになるのだ」
これも事実だかどうだか頭山さんに聞いてみない事にはわからないが、その時に家中《うち
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