髪切り飽かず」

あかつきの       雲の波打つ
はてしなき       わが黒髪を
残りなく        切りつくさむとや
丸坊主に        しつくさむとや」

埃及《エジプト》の         御代を知る身を
はばからね       髪切虫よ
汝《なれ》こそは        虫の王なれ
青光る         髪切虫よ
美《うる》はしの        髪切虫よ」

われ死なば       汝《なれ》に慣ひて
髪切の         虫と生まれて
かぎりなく       恋を重ねて
はてしなく       卵を生みて
黒雲の         天ぎるきはみ
白浪の         打ち寄るかぎり
匐ひまはり       且つ飛びかけり
闇といふ        闇に忍《しの》びて
女てふ         女の髪《かみ》を
こと/″\く      喰《たう》べつくして
青空の         たなびくところ
黒つちの        くゞまるところ
人間の         さまよふきはみ
口づけの        結ぼほるかぎり
美しき         坊主あたまを
永久永遠《と
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