髪切虫
夢野久作
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)桐《きり》の
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)黒|天鵞絨《びろうど》色の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]河馬《アマム》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)たど/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
桐《きり》の青葉が蝙蝠《こうもり》色に重なり合って、その中の一枚か二枚かが時折り、あるかないかの夕風にヒラリヒラリと踊っている。
うるんだ宵星の二つ三つが、大きく大きくその上にまばたき初めると、遠く近くの魂がヒッソリと静まり返って、世界中が何となく生あたたかい悪魔のタメ息じみて来る。
その桐畠の片隅の一番低い葉蔭に在る、太い枝の岐《わか》れ目に、昼間から一匹の髪切虫《かみきりむし》がシッカリと獅噛《しが》み付いていた。その髪切虫が、そうした悪魔気分に示唆《そそ》
次へ
全11ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング